□TRIFLE□編集者は恋をする□
こぢんまりとした店構えの吉乃の前につくと、後ろから三浦くんが追いかけてきた。
「俺も一緒にいいですか?」
「いいけど、おごらないよ?」
その息の切れた様子に、わざわざそんな急いで追いかけてこなくても、と思いながら頷いて扉を開ける。
「いらっしゃいー、あら平井ちゃん。今日は早いね」
まだ開店したばかりで、お店の中にいるのはカウンターの中のおばちゃんだけだった。
「おばちゃん、なにか美味しい物食べさせて」
カウンターのはじっこに、三浦くんと並んで座る。
「美味しい物ねぇ。すぐ出せるのはかすべの煮つけと帆立と三つ葉の混ぜご飯があるけど。あとおでんももうすぐ煮えるかな」
「うわぁ、美味しそう」
まだ料理も見ていないのに、小さなお店に漂う匂いと料理名だけでよだれがでてくる。
「俺はそれと肉も食べたいなぁ」
「鳥と牛ならどっちがいい?」
「牛肉!」
「はいはい。じゃあ、美味しいの作ってあげるから大人しく座ってなさい」
「はーい」
三浦くんと二人で、子供みたいに声を揃えて返事をする。