□TRIFLE□編集者は恋をする□
今は誰も座っていない片桐のデスクを薄目で睨みながら、「デガワ、大丈夫なんでもないから」と言うと、恐怖のあまりデガワが一歩後ろに下がった。
「葉月さん!なんか平井さんが怖いんですけど!」
デガワに泣きつかれた葉月さんは、マックの隙間からひょこっと頭をのぞかせて私の顔を見る。
「どうしたの?片桐と何かあったの?」
葉月さんは今一番聞きたくない名前を平然と口にした。
「別に何もないです!」
「ふーん」
彼女は小さく首を傾げながら、電話の受話器を上げる。
何気なくその指の動きを見ているとなんとなく嫌な予感がして、私は慌ててたずねた。
「どこに電話するんですか?」
「どこって、平井が正直に教えてくれないから、片桐に直接聞いてみようと思って」
「ちょっと!やめてくださいよ!」
「じゃあ教えてくれる?」
にっこり笑う葉月さん。
この人、綺麗な顔して恐ろしすぎる。