□TRIFLE□編集者は恋をする□
 

興味津津でフロアを見渡す彼女に、三浦くんがワンテンポ遅れて突然大きな声をあげた。

「え!匠ってもしかして片桐さんの事ですか?って事は美咲さんは片桐さんの彼女なんですか!?」

「……バカ!」

余計な事を言う三浦くんの足を、デガワが思いっきり踏みつける。

「いっつ!!」

デガワの今日の靴は、8センチヒールのパンプスだ。
あれで思いっきり踏まれたら相当痛いだろうけど、同情する気にはなれなかった。

「え?どうしてそんなに驚くんですか?」

デガワと三浦くんの様子を見て、彼女は不思議そうに首を傾げた。

「いや、だって片桐さんって……」

そう続けようとした三浦くんの足に、もう一度デガワの踵が落ちてくる。

「ーーーーーっつう!!!!」

さっきと同じ場所にヒットしたようで、三浦くんがこらえきれずに足を押さえてうずくまった。

そのままうずくまってろ。これ以上余計な事を言うな!
とういうような、ものすごい目力で三浦くんを見下ろしながら、デガワがとりつくろうような笑顔を浮かべ彼女に話しかける。

「美咲さんって、なんのお仕事してるんですかー?」

「一応美容師です。元だけど」

彼女は小さく笑いながらそう言った。

「元?」

「色々あってハサミを持てなくなっちゃって。今は家事手伝い、かな」

デガワ、葉月さん、と順番に顔を見ながら話す彼女は、最後に私の顔を見て静かに微笑んだ。


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