□TRIFLE□編集者は恋をする□
とりあえず手持ちの仕事を終え、一息ついてコーヒーでも飲もうと給湯室に入る。
まるで私を待ち構えていたみたいに、三浦くんに腕を掴まれた。
「片桐さんに彼女がいるってどういう事ですか!?」
真剣な表情でたずねられ、私は困って首をかしげてみせた。
「どういう事って言われても……」
「平井さん、もしかして知ってたんですか?」
私の曖昧なリアクションに、三浦くんの眉間にシワがよる。
「知ってたっていうか、彼女いるって前から言われてたのに私がすっかり忘れてたんだよね」
「もー、何やってんですか」
自分よりもずっと年下の大学生の男の子に、呆れられてしまった。
「俺、片桐さんはずっと平井さんを好きなんだと思ってたんだけどな。彼女いるなんて」
「それ前も言ってたけど、三浦くんの勘違いだよ。片桐は私なんて好きでもなんでもないと思う」
自分で言って、ずきりと胸が痛んだ。
「それなら、あの時無理やりにでも俺が連れて帰ればよかった」
大きなため息をつきながら、三浦くんはそう言った。
「あの時って?」
「前に吉乃でデガワさんと三人で飲んだ時。片桐さんと殴り合いになってもいいから、平井さんを離さなければよかった」
「いやいや、殴り合いって」