□TRIFLE□編集者は恋をする□
 

『そういえば、夏樹ちゃん結婚するんだって!?』

容赦ない電話をかけてきたのは母親だった。

高校時代から親友だった夏樹は、お互いの家に入り浸り家族顔見知りの仲だったとはいえ、夏樹の結婚の話が母親の耳にまで入っているとは。
これはなんだか面倒な予感がする……。

「えっと、お母さん、今忙しいから……」

『何言ってんの、今寝てたって言ってたでしょ。何が忙しいのよ』

しまった。
寝起きの状態で電話に出たから、ついうっかり寝起きである事を素直に伝えていたんだった。

『あの夏樹ちゃんが結婚って、お母さんびっくりしちゃった。でも考えてみればもう28歳だものね。いつ結婚したっておかしくない年よね』

「はぁ、まぁ、そうだね」

『で』

「で?」

『で?』

で、の次の言葉は、聞かなくてももう分かってる。
私はため息をつきながら電話の向こうの母親に頭を下げた。

「私はなんの予定もなくてすいません」

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