□TRIFLE□編集者は恋をする□
仕事だけに集中して日々を過ごせば、あっという間に時間が流れることを知った。
まるで目も耳も塞ぐように、目の前の仕事の事だけを考えていればいい。
「んもー。平井ちゃん、あんたちゃんと寝てるの?」
仕事の合間にご飯を食べに来た吉乃で、顔を見たとたんおばちゃんにそう言われた。
「え、寝てるよ。一応は」
「ちゃんと自分の家で?あったかいお布団で?」
「う、それは……」
言葉につまると、おばちゃんはこれ以上ないってくらい大きなため息をつく。
「もう。今日はお金はいいから、美味しい物たくさん食べていきなさい!」
おばちゃんはししゃもや里芋の煮付けやカレイの空揚げや北寄貝のサラダなんかをどんどん出してきた。
「おばちゃん、こんなに食べれないよ」
目の前のカウンターを埋め尽くすお皿の数に、後ずさりしたくなる。
「だめ。平井ちゃんが来たらしっかり食べさせてやれって言われてるんだから」
ほかほかの玄米ご飯がよそわれたお茶碗を手渡しながらそう言われ、私は瞬きをする。
「え?誰に?」
「片桐くん」
なんで片桐がそんな事……。