□TRIFLE□編集者は恋をする□
「片桐くん心配してたよ。平井ちゃんは最近仕事ばっかりして無茶しすぎだって」
一体、誰のせいで私がこんな仕事に依存した生活をしてると思っているんだろう。
なんて、文句を言いたくなった。
いや、本当は自分が勝手に仕事をしてるだけなんだけど。
「はい、たちのお味噌汁も暖まるから食べなさい」
そう言いながら、ぷりっとしたタラの白子入りのお味噌汁をおわんによそってくれた。
「いただきます」
ふーふーと湯気を払うように二、三度息を吹きかけてから、おわんに口をつける。
優しい味の暖かいお味噌汁に、身体がほっとほぐれてじわりと微かに視界が滲んだ。
「おばちゃん……」
「何?」
片桐、他には何か言ってた?
どんな表情で私の事を話してた?
少しは、私に気があるように見えた?
なんて、おばちゃんに片桐の事を聞きたかったけど、ごくりと言葉を飲み込んで、小さくため息をついた。
「おばちゃん、すごく美味しい……」
「そ。よかった。食べきれなくてもいいから、ゆっくりよく噛んで色んな種類のものを食べなさい」
「うん」
私は小さく鼻をすすって、箸を持ち直した。