□TRIFLE□編集者は恋をする□
「平井」
「は、はい!」
不意に片桐にそう呼びかけられ、驚いて頭を上げた。
「お前、なに慌ててるんだよ」
今していたバカな想像を悟られたくなくて、必死に平静を装う。
「別に。仕事に集中してたから、驚いただけ」
「ふーん」
片桐は小さく首を傾げてこちらを見下ろした。
見つめられるだけでドキドキして緊張してしまう。
「何?」
「あぁ。昨日連絡あったんだけど、お前担当のニューオープンのページ、取材してたパンケーキの店の開店が2週間遅れることになったんだって」
「じゃあ発売日にはまだオープンしていないことになるんだ」
「来月載せるつもりの店はもうオープンしてるから、そっちと差し替えだな」
「そうだね。早めにお店に連絡して取材に行かなきゃ」
うなずきながら自分のスケジュールを確認する。
「取材、俺が行こうか」
片桐が私のスマホを覗き込みながら言った。
「え?」