□TRIFLE□編集者は恋をする□
「だって、お前予定びっしりだろ」
TRIFLEとウエディング本を掛け持ちしているせいで、私のスケジュールはびっしりと埋まっていた。
背の高い片桐が私のスマホを覗き込んだせいで、自然と顔が近づく。
身を屈めるその姿はまるでキスをしようとしてるみたいだ。
なんて思って、無意識にそんな事を考えてしまった自分が恥ずかしくて頬が熱くなった。
「いや、大丈夫っ!」
慌てて首を横に振ると、片桐は私の髪を大きな手でかきまぜた。
「無理すんなよ」
私を見下ろして小さく笑う片桐。
その余裕の表情に、動揺しているのは私ひとりなんだなと少し悔しくなる。
「……あ、そういえば」
「ん?」
「この前美咲さんに協力してもらったウエディング本の撮影、試し撮りの画像あるけど、見る?」
わざわざ片桐に言わなくてもいいのに、余計な事を話し出す自分の口が憎い。
そんな事をしたら、綺麗なドレス姿の美咲さんの写真に見惚れる片桐を見て、余計に傷つくだけなのに。
「いや、いいわ」
写真を見たがるかと思ったのに、片桐は興味なさそうに首を横に振った。
「え?いいの?」
「あぁ。俺、撮影あるから出てくる」
片桐は私に背を向けて歩き出す。