□TRIFLE□編集者は恋をする□
だめだもう。
このままどん底まで気分が落ちそうだ。
そう思って立ち上がり、コートを着て外に出た。
こんな時は吉乃のおばちゃんに美味しい物を食べさせてもらおう。
編集部のすぐ近くの裏通りにある吉乃へと向かうと、いつもは明るく灯っているはずの小さな提灯が消えていた。
あれ。
今日はお休みだっけ?
吉乃の定休日は日曜だったはずだけど。
人気のない暗い店の入り口に貼られた張り紙には、『店主急用のためしばらくお休みいたします』とだけ書かれていた。
「そんなぁ……」
こんな私をあたためてくれるのは、おばちゃんの美味しい料理だけなのに。
まるでおばちゃんにまで見捨てられたような気分になった。