□TRIFLE□編集者は恋をする□

 

「あーぁ。あったかいご飯が食べたいよう」

なんて言いながら、コンビニで買ってきたおにぎりを齧る。

「どこか外に食べに行けばいいじゃないですか」

そう言ったデガワに、「だってめんどくさいんだもん」と返すと、呆れたようにため息をつかれた。



あれから何度かお店の前を通ったけど、吉乃はいつも休業中だった。
おばちゃんになにかあったのかなと心配になったけれど、連絡先も知らないし事情を知るすべもない。

「平井」

低い声で名前を呼ばれ振り返ると、編集長が不機嫌そうな表情で「ちょっとこい」と顎をしゃくる。

編集長がここまで機嫌が悪いのは、仕事でなにかあった時だ。

気を引き締めながら編集長の元へと急いで向かう。デスクの上に印刷所から戻ってきたゲラが乱暴に投げられた。

「これ、お前の担当だろ」

「……はい」

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