□TRIFLE□編集者は恋をする□
 

「うちの雑誌と成図社のウエディング本を掛け持ちしてバカみたいに忙しいし、差し替えの事を忘れても仕方ないよな。
この店のオーナーにとっちゃ、苦労して作り上げてやっとオープンさせたかけがえのない大切な店だけど、お前にしてみれば毎月何十件って掲載してる店の中のたった一軒の話だもんな」

編集長の言葉が、胸に刺さり言葉が出なくなる。

編集長の言う通りだ。
私はなにやっているんだろう。
仕事の忙しさなんて言い訳にならない。
掲載させてくれる一軒一軒のお店の気持ちを考えないで、取材に協力してくれる店主の方の思いを蔑にして。
……こんなの、編集者失格だ。

何も言い返せず唇を噛む私に、

「しっかり仕事しろよ」

編集長は低い声でそう言い残すと、席を立ってフロアから出て行った。


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