□TRIFLE□編集者は恋をする□
片桐は私の横に来ると、ぽんと軽く頭を叩いた。
「まぁ今月は校了に休日絡まないし、一折くらい遅れてもなんとかなるだろ。最悪中野さんに泣いてもらえば」
「うん、電話したら念校になっても全然大丈夫ですよって言ってくれた」
「そっか」
安心したように片桐が私の隣に腰を下ろす。
「なんか手伝える事あるか?」
「ううん、大丈夫」
「いいから、それこっちに貸せ。チェックしてやる」
私が書いたばかりの原稿を、片桐が強引に奪い読み始める。
「あ、ありがと……」
自分ひとりで書いた原稿だと、どうしても自分のミスには気づけない。
こんなギリギリの入稿スケジュールじゃミスは許されないから、誰かに読んでもらえるのはものすごく助かる。
「片桐は、こんな時間にどうしたの?」
「あぁ、明日早朝に撮影入る事になったから、機材取りに来た」
「早朝ってどこで?」
「月浦に6時着」
「うわ……!それ全然寝れないじゃん!」
人の仕事の手伝いなんてしてる場合じゃないよそれ。
私と話なんかしてるより、少しでもいいから仮眠するべきだ。