□TRIFLE□編集者は恋をする□
「デザイナーの木下さんが車出してくれるから、後部座席で寝かせてもらえるし大丈夫。昼過ぎには編集部に戻れると思う」
いや、それでも。
この時期は撮影だけじゃなくデスクワークもいやってほどあるのに。
私の手伝ってもらうよりも、反対に片桐の仕事を手伝ってあげた方がいいんじゃないか。なんて私が慌てていると、ぽんと頭に大きな手のひらが乗せられた。
「俺は大丈夫だって」
まるで子供をあやすように、ぐりぐりぐりと指先に力を込めて私の頭をなでる。
「でも……」
「本当にヤバくなったら、ちゃんとお前の事頼るから」
そう言って私の頭から手を離した片桐は、切れ長の目を細めて優しく笑った。
勝手に身体の中心あたりがきゅんとする。
こんな至近距離でそんな優しく微笑まれると、片桐への好意が沸き上がる……。
どうしよう。
どうしよう。
どうしよう。
今、ものすごく抱きしめて欲しい。
前に仮眠室で二人で抱き合って添い寝したみたいに、ただぎゅっとして欲しい。
その逞しい腕の中で、すこし煙草の香りがまじる片桐のにおいに包まれたい。