□TRIFLE□編集者は恋をする□
 

なんだろう、とぼんやりと見ていると、

「三種の豆入りのミネストローネと、桜エビと菜の花のクリームシチュー。どっちがいいですか?」

デガワはそう言いながら、並んだ二つの容器のふたを取った。
開けられた容器からこぼれる白い湯気と、ふわりと優しいおいしそうな香り。

「うわ、どっちも美味しそう……」

そういえば、きのう夕方におにぎり一つ食べただけだった。
今まで忘れていた空腹感が一気に襲ってきて、ぐうとお腹がなる。

「私が選んでいいの?」

「どうぞ」

「じゃあ、桜エビのクリームシチュー」

「やっぱり平井さんはエビの方にすると思った」

デガワがくすくす笑った。

綺麗なピンク色のエビと、鮮やかな緑の菜の花と、柔らかな湯気をたてる優しい色のクリームシチュー。
美味しそうな色彩に、ぐぅ。と、またお腹がなる。

「平井さん、パンと玄米おにぎりだったら……」

「おにぎり!」

「そう言うと思った」

ビニール袋の中からパンとおにぎりを取り出して、おにぎりは私の前に、パンは自分の手元に置いてデガワがどうぞと笑った。

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