□TRIFLE□編集者は恋をする□
 

「っていうのは冗談ですけど。少し考えればわかるじゃないですか」

デガワはスープにライ麦パンをちぎって浸し、口の中に放り込む。
まるでリスみたいに頬を大きく動かしながらもぐもぐと飲み込むと、まっすぐに私の方を見た。

「今まで何年も一緒に仕事をしてきたんだから、片桐さんがどういう人間か、知ってるでしょ?彼女に暴力をふるうような人だと思います?」

「そうは思わないけど……」

「それに、他の男にそんな事を言うなんて、なにか魂胆があるに決まってますよ。どうせ平井さんを動揺させて牽制してるだけでしょ。本当に彼氏に暴力ふるわれていたら、知り合ったばかりの、しかも彼氏と仕事の関係があるかもしれない職種の男にわざわざそんな事言わないです」

「そういわれれば、そんな気もする」

そうつぶやいた私に、デガワは呆れた顔でため息をついた。

「平井さんって、仕事だとなんでも決断できて冷静に仕事できるのに、恋愛関係になると本当にダメダメですよね」

そんなにはっきり言われると傷つく。
自分でもイヤってほど自覚してるから余計に。

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