□TRIFLE□編集者は恋をする□
「……なんですか?急に黙り込んで」
おにぎりを持ったまま動きを止めた私を見て、デガワが不審そうに眉間にシワをよせる。
「あ、ううん。なんでもない」
慌てておにぎりにかじりつき、玄米ご飯をもぐもぐと噛み砕きながら、天井を仰いだ。
「なんか、みんな一緒なんだね」
「なにがですか?」
「恋愛がうまくいかなくて、悩んだりしてるの。私だけじゃないんだなぁと思って」
「何当たり前の事言ってるんですか」
しみじみとそう言った私を、デガワは呆れたように鼻で笑った。
当たり前なんだ。
仕事をしながら恋愛して。
うまくいかなくて悩んだり落ち込んだり。
きっと働く女の子たちはみんな、そんな胸の内を隠して今日も職場で頑張ってるんだ。
「あーあ!なんかあったかくておいしい物食べたら、元気出て来た!」
デガワが持ってきてくれた温かいスープのお陰で、なんだか身体の芯がぽかぽかしてきた。
□TRIFLE□09□END□