□TRIFLE□編集者は恋をする□
「すいませんでした!」
勢いよく頭を下げた私を見て、編集長はデスクに頬杖をついた。
「これからはもうこんなミスをしないように、気を引き締めて……」
「あー、いいいい。そういうの面倒だから」
謝り続ける私にうっとおしそうに首を横に振る。
「ちゃんと校了には間に合うんだろ?」
「はい。中野さんに電話して朝一で差し替えの原稿送ったので大丈夫です。これがその差し替え分なのでチェックお願いします」
私が差し出した原稿をちらりと見ながら、編集長は煙草を取り出し口に咥える。
「平井。なんでわざわざお前に他の出版社の手伝いなんさせてると思ってる?」
咥え煙草のまま問われ、なんでだろうと首を傾げた。
「ええと……、新田さんに弱みを握られてて頼みを断れなかったとかですか?」