□TRIFLE□編集者は恋をする□
 
とりあえず思い付きでそう言うと、編集長が舌打ちをした。
ちょっとした冗談のつもりだったのに、相変わらずガラが悪い。

「まぁ、その話は今度でいいか」

編集長はひとり納得して勝手に話題を切り上げる。
そう言われると、どうして私が成図社の手伝いをすることになったのか、余計に気になる。

「そういえば、最近吉乃行ったか?」

「ちょこちょこお店のぞいてはいるんですけど、ずっと閉まったままですよね」

「今、入院してるらしいぞ」

「えっ!?おばちゃんどこか悪いんですか!?」

お休みが続いてたから何かあったのかなと心配していたけど、まさか入院してたなんて。

「見舞いに来てくれるような身内もいなくてヒマらしいから、お前校了終わった後にでも遊びに行ってやれ」



そう言って、編集長は私に向かって小さく折りたたまれた紙を差し出した。


< 215 / 396 >

この作品をシェア

pagetop