□TRIFLE□編集者は恋をする□
校了あけの天気のいい日曜日。
私は郊外にある小さな整形外科の前にいた。
編集長からもらったメモを頼りにやってきたこの場所。
隣は小さな林になっていて、病院の白い壁に揺れる木漏れ日が反射してとても綺麗だった。
「いい天気ですねー。デート日和ですね」
私の後ろで浮かれた声を出す三浦くんを睨む。
「デートじゃなくて、おばちゃんのお見舞いだよ。っていうか、なんで勝手についてくるのよ」
私ひとりでおばちゃんのお見舞いに行こうと思ったのに、どこからか聞きつけた三浦くんもついてきたのだ。
「いいじゃないですか。俺も吉乃のおばちゃんに会いたいし」
にこにこ笑う三浦くんに毒気を抜かれ、小さくため息をつきながら病院の中へと入った。
看護師さんに教えてもらった病室をのぞくと、ベッドの上に退屈そうな顔をしたおばちゃんをすぐに見つけた。
「おばちゃーん、お見舞いに来たよ。大丈夫?」
「わぁ、平井ちゃん!来てくれたの?」
私が声をかけると、おばちゃんの顔がぱあっと明るくなった。
「編集長におばちゃんが入院してるって教えてもらったの。ずっとお店休みだから心配してたんだよ」
「あらあら、心配させてごめんね」
思っていたよりずっと元気そうな様子にホッとしながらベッドの脇へと近づく。