□TRIFLE□編集者は恋をする□
まだ眠っている美咲さんを起こさないように足音を忍ばせながら、コーヒーを淹れようと給湯室へと向かう。
「あ、コーヒーなら俺が淹れますよ」
「ありがとう。じゃあ顔洗ってこようかな」
んー、と大きく伸びをしながら気を引き締めるように髪を高い位置できつく結び直す。
「あ、そういえば平井さん」
「何?」
ロッカーにあるポーチを取りに行こうと歩きだすと、三浦くんに声をかけられた。
「俺、前に美咲さんの事、どこかで見た事あるって言ってたじゃないですか。あれ、どこで見たのか思い出しました」
「あぁ、そういえば前にそんな事言ってたね」
「俺一年くらい前によくカットモデルをやってたんですけど、その頃付き合ってた美容師の彼女が美咲さんと同じ美容室で働いてたの思い出して」
「へぇ……。綺麗な女の人にはみんなにそういう事を言って口説いてるのかと思ったけど、本当に面識あったんだ」
つい思ったことをぽろりと口に出してしまい、三浦くんに睨まれた。
「平井さんは俺の事、どんだけ女好きだと思ってるんですか」
彼の鋭い視線から目をそらす。
「最近その時の元カノに偶然会って色々話してたんですけど、美咲さん、嘘ついてますよ」
「嘘……?」