□TRIFLE□編集者は恋をする□
 

編集部を出てエレベーターホールへと向かう美咲さんに、並んで歩きながら話しかける。

「美咲さん、次の土曜日はなにか用事ありますか?もし暇だったらちょっと付き合って欲しいんですけど」

「は?なんで私があんたに付き合わないといけないのよ」

「だって、この前の水曜日あんなに酷いドタキャンしたんだから、今度は私の頼みを聞いてくださいよ」

「仕事の手伝いしたんだから、もういいでしょ?」

「今回の分は仕事なのできちんとお金でお礼をします。それとは別に、プライベートでちゃんと埋め合わせしてください」

「はぁ?」

私の提案に思いきり不服そうに顔をしかめる美咲さん。
こういう時は相手が言い返す前に、さっさと決めて話を終わらせるのが一番だ。

「じゃあ、連絡するんで土曜日開けておいてくださいね。約束ですからね!」

私が一方的にそう言うと、丁度エレベーター5階に到着し扉が開いた。

「あ……」

そのエレベーターから降りてきた人に、思わず私も美咲さんも揃って言葉に詰まる。
背の高い男が私たちを見下ろしていた。

< 274 / 396 >

この作品をシェア

pagetop