□TRIFLE□編集者は恋をする□
 

膨れっ面でそう言うと、片桐の大きな手のひらが私の頭の上にぽんと乗っかった。

「いや、褒めてるよ。お前のそういう仕事バカな所、すげー好き」

片桐は大きな手で私の髪をわしゃわしゃと乱暴にかきまぜた。

「な……っ!!」

突然好きなんて言われて、頭の中が真っ白になる。
驚きで目を見開いた私に、まるで何事もなかったかのように私の頭から手を離し、さっさと編集部へと入って行く片桐。

すげー好き。すげー好き。すげー好き。

さっき片桐に言われた言葉が勝手に脳内でリプレイされる。
どうせ仕事ばかりしてる私への皮肉なんだろうとか、彼女がいるくせに冗談でも好きとか言うなとか、そもそも、私と美咲さんが一緒に仕事してた時点でもっと慌てて取り乱せとか、冷静に考えればツッコミどころはたくさんあるんだけど。

「あー、もう……っ!」

あんな表情ですげー好きなんて言われたら、悔しいけど、もうそれだけでこの先百年くらい仕事頑張れそうな気がした。


□TRIFLE□12□END□

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