□TRIFLE□編集者は恋をする□
「昔からそうなわけ?」
「んー、そうかも。昔から自分の好きな事にひとつに夢中になっちゃうと、やらなきゃいけない宿題は後回しにするタイプだった」
「んで、毎年夏休みの最終日に泣くパターン?」
「そうそう」
私が真顔で頷くと、片桐は吹き出すようにして肩を震わせた。
くくく、と小さく声を漏らして笑う。
「『夢中になる好きな事』が仕事で、『やらなきゃいけない宿題』が恋愛か」
「バカにしてるでしょ?」
デスクに肘をついたままそうやって笑う片桐を、思いきり睨んだ。
すいませんね、どうせバカな鉄の女ですよ。
そう思いながら大きく鼻から息を吐き出すと、
「いや、お前らしいわ」
不意に視線を上げて私を見つめた片桐が、優しく笑った。
いつもは鋭い切れ長の瞳が、柔らかく緩んで私を見る。
そしてデスクにだらしなくもたれ掛っていた身体を起こし、大きくのびをした。
「でも、苦手なもんを後回しにしたツケが回って来てもしらねーぞ」
さっきまで見下ろしていた片桐が、今度は高い位置から私を見下ろしながらそう言った。