□TRIFLE□編集者は恋をする□
「あんたって、そういう事よく言えるよね」
「え?」
「いてくれて助かったとか、あなたのお陰ですとか……」
「だって、実際美咲さんのお陰ですごく助かりましたから。あ、この前撮影した雑貨のページのデザインカンプ見ます?」
「いい、いらない。大体さぁ、私とあんたが二人で出かけるって事が、ありえなくない?」
そう強い口調で言われて、私もそうだよなとうなずく。
美咲さんは片桐の彼女で、私は片桐の浮気相手という立場で、こうやって普通に出かけたりするのは普通ありえない。
だけど、成り行きとはいえ一緒に朝まで仕事して、それまでは『片桐の彼女』という存在でしかなかった美咲さんを、一気に身近に感じてしまった。
正直、美咲さんのことが一人の人として嫌いじゃないんだと思う。
でも、それは私が勝手にそう思っているだけで、美咲さんは私なんて大っ嫌いなんだろうな。
まぁ、彼氏の浮気相手なんて、好きになれるはずがないか。
一人で考え込んでいると、美咲さんは階段を上りきって私の隣にいた。