□TRIFLE□編集者は恋をする□
「何黙り込んでんのよ」
「いえ、なんでもないです。えっと、病室どこだったかなぁ」
慌てて顔を上げて、おばちゃんのいる病室を探す。
「おばちゃーん、元気にしてた?」
そう言っておばちゃんのベッドを覗くと、「あら、平井ちゃんいらっしゃい」と嬉しそうな笑顔が返ってきた。
「今日はお友達も一緒なの?」
私の後ろから病室に入って来た美咲さんを見て、おばちゃんが首を傾げる。
「あ、えっと。美咲さん。片桐の彼女なんだけど」
「へぇ……、片桐くんの。どうも、わざわざ来てくれてありがとう」
おばちゃんは一瞬眉を上げ、すぐにおもしろがるような表情でニッと笑った。
「美咲さん、元美容師だから、いてくれたら心強いと思って付いてきてもらったの」
「あら、それはよかった」
「じゃあさっそく切っちゃう?病室で切ってもいいのかな」
「そうだね。ちょっと看護師さんにここで切っていいか確認しようか」
「私、ナースステーションに行って聞いてくるよ」
私とおばちゃんの会話を聞いていた美咲さんが、はぁ?と驚いたように目を開く。
「ちょっと、さっき言ってた厄介なお願い事って……」
「おばちゃんに、髪の毛がのびてきて邪魔だから切ってくれって頼まれちゃって」