□TRIFLE□編集者は恋をする□
 

「片桐だって、浮気してヤキモチやかせようとするよりも、素直に話して相談してくれた方がずっと喜ぶと思いますよ」

「でも、私のくだらない悩みなんて……」

「片桐は、人の悩みをくだらないなんて思う人じゃないです!」

うじうじと言い淀む美咲さんに、思わず声が大きくなる。

「私がどんなバカな失敗してへこんでても、片桐はちゃんと話聞いてくれるし、絶対笑ったりしないし、いつもさりげなく助けてくれるし……っ」

私が力説していると、美咲さんはちょっとさみしそうに笑った。

「あんたって、そんなに匠のことが好きなんだ」

「え……?」

「むかつくなぁ」

むかつくってどういう意味だろう。
そう思いながら首をかしげる。

「そういえば、美咲さん。どうして片桐のせいでハサミを持てなくなったなんて嘘を言うんですか?」

「別に、嘘じゃないもん」

美咲さんは私の質問に顔を背けながらそう言った。

「また、嘘を言う。お客さんと親密になってお店に怒られてクビになったんですよね?」

「そうよ」

「じゃあハサミを持てなくなったから美容師を辞めたっていうのは嘘でしょ?」

「それも本当」

「もう!本当にめんどくさい性格してますよね、美咲さんって!」

美咲さんと話していると、なんだか頭が混乱してくる。

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