□TRIFLE□編集者は恋をする□
「てんとう虫ってあんたに似てるわ」
「え?私こんなに真ん丸に太ってませんよ」
虫に似てると言われても、正直あまり嬉しくない。
「太ってるって意味じゃなくて」
「じゃあなんですか?」
「なんか、いつも上に向かってどんどん突き進んで、ひとりだけ前向きでむかつく」
「なんですかそれ。褒められてるのか貶されてるのかかわりません」
「貶してんのよ」
やっぱりか。
まぁ、美咲さんが私を褒める事なんてありえないんだけど。
そんな会話をしている最中もてんとう虫は上を目指すことを諦めず、右手の人差し指の頂点まで登っては左手の手のひらへ戻されるというように、美咲さんの手のひらの上で遊ばれていた。
「一直線に太陽を目指すくせに、不器用で不格好で、ひっくり返ったら無様にジタバタしてなかなか起き上がれないし、そのくせなんか放っておけない愛嬌があるし。私みたいに捻くれた女より、あんたを好きになる気持ちが分かるから、むかつく」
「なんの話ですか?」
「っていうか、なにボーっとしてんのよ。てんとう虫を外に逃がすんでしょ。さっさと窓開けなさいよ」
美咲さんは舌打ちをしながら私を睨む。