□TRIFLE□編集者は恋をする□
「お礼を言わなきゃいけないのは、私のほうだよ。無理やりおばちゃんのお見舞いにつき合わせて、髪の毛を切ってもらったんだよね」
私がそう言うと、片桐は驚いたように動きを止めた。
「美咲が髪を?」
「おばちゃんがどうしても髪を切ってっていうから、美咲さんにアドバイスもらおうと思って付き合ってもらったんだけど、結局美咲さんに切ってもらっちゃった。やっぱり美咲さん美容師の仕事が好きなんだね。すごくいい表情で楽しそうに髪を切ってたよ」
片桐は右手で自分の額を押さえるようにして、俯いて笑い出した。
「ちょっと、どうして笑うの?」
「いや、悪い。驚いた」
肩を揺らして笑う片桐が、私の事を見下ろす。