□TRIFLE□編集者は恋をする□
 

黒いストレートの綺麗な髪に、黒いセルの眼鏡。
ザ、クールビューティーと言った感じの、凛とした美人の葉月さん。

これが編集長の発したセリフなら確実にセクハラだって怒ってやるのに、葉月さんの口から出ると不思議と上品に聞こえるから、どんなリアクションをすればいいのか困る。
私が黙り込んでいると、「そうね」と葉月さんが提案してくれた。

「インデックスと店名の囲みの色をカテゴリごとに変えてるから、見開きで見たら大分印象変わると思うんだけど」

ゆったりとした口調で、でも迷いなくそう言った葉月さんは、細く白い指でカンプの小口側にあるインデックスを指さす。

「うーん。それだけでパッとわかりますかね?背景に薄く色を入れるのはどうですか?」

「背景かぁ。ラーメンの画像ってそれだけで絵の力が強いから、背景に色が入るとうるさくなるわよ。食べ物の特集ページに寒色系の背景を入れるのもどうかと思うし」

「あぁ、そうですよね……」

だめかぁ。
私がしょんぼりと肩を落とすと、葉月さんはあからさまに落ち込んだ私を見てくすりと笑った。

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