□TRIFLE□編集者は恋をする□
「そんな事を言ってたんだ。美咲は人に説明をするのが苦手で、すぐ自分が悪い事にして終わらせようとするんだよな」
「片桐、ちゃんと話して。美咲さんがどうして仕事をクビになったのか、知りたい」
まっすぐに片桐を見てたずねると、彼は静かに頷いた。
「もう一年以上前に、俺と美咲は別れてる」
「え……!?」
片桐はカメラのファインダーから顔を上げ、口元を少しゆがめて困ったような顔で微笑んだ。
「もしかして美咲さんが美容室を辞めた頃?」
「そう、美咲が店を辞めるちょっと前かな」
そう言いながら片桐は、ふっと窓の外を見た。
チャペルの南側一面を覆う大きなガラス張りの窓からは、目の前の泉の水面に反射した光が反射してチャペル全体を柔らかく照らす。
木々が揺れる音と、微かな水音。どこからか聞こえる鳥のさえずり。
こんな美しい場所で片桐と二人きりでいる事を不思議に思う。
片桐は窓の外の森を眺めながら、静かに話しだした。