□TRIFLE□編集者は恋をする□
 

「じゃあ、仕事熱心な平井が納得できるように、試しに適当なアタリ画像入れて印刷してみる?」

「あ、お願いします!」

勢いよく私が頷くと、葉月さんはキャスター付の椅子をくるりと反転させてマウスを握った。

葉月さんは、この編集部で唯一きちんとしたデザインの知識のある人だ。
以前は印刷会社や編集プロダクションで働いた経験があるらしく、この会社に入ってまだ3年だけど、今ではTRIFLEのほとんどのページのレイアウトを担当している。
なんでこんなに綺麗で色っぽい素敵な女の人が、万年人手不足で激務で薄給のこんな弱小編集部に入社してくれたのか、ものすごく不思議だ。

「はい。どう思う?」

そんな事をぼんやりと考えていると、目の前にラーメンの画像が入ったカンプが差し出された。
さっきまでのデザインカンプとまったく同じレイアウトなのに、実際にラーメンの画像が入るだけで、ぜんぜん違う。

「本当だ。実際にラーメンの画像が入ると、印象が違いますね」

「納得してくれた?」

「はい!もう大満足です。ありがとうございます葉月さん。時間とらせてしまってすみません」

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