□TRIFLE□編集者は恋をする□
私を見つめ返す片桐の表情はとても優しくて胸が苦しくなる。
美咲さんがいるのに、簡単に私に好きなんて言えるような男なら、こんなに愛おしく思わなかったかもしれない。
無口で不器用で、でも本当は真面目な男だから、私は片桐の事をこんなに好きになってしまったのかもしれない。
「美咲さんは、もう、いいの……?」
「あぁ。もう愛情の無い仕事バカの男にしがみ付くのやめるって宣言された。次は自分に尽くしてくれイケメンの医者を仕事先で探すって。女って逞しいよな」
笑いながらそんな事を言う片桐に、意地悪を言いたくなる。
「そんな事言って、本当は美咲さんに愛想尽かされて少し寂しいんじゃない?」
「まさか」
私の意地悪に片桐は小さく肩を上げて笑った。
そしてまたカメラのファインダーを覗きこむ。
「美咲が立ち直ってくれてほっとした。それに、これで遠慮せずにお前を口説ける」
そんな冗談を二人で言って、お互いに苦笑いした。
苦笑いしながらも、鼻の奥がつんと熱くなって慌ててカメラから顔を反らす。