□TRIFLE□編集者は恋をする□
「平井」
片桐の低く艶のある声が、私の名前を呼んだ。
それだけで、心臓がきゅっと身をよじって反応する。
片桐はずるい。
こんなに簡単に私を動揺させて振り回す。
「今まで、悪かった」
その真剣な声に、おそるおそる片桐の方を振り返った。
まっすぐに私を見つめる、彼の綺麗な黒い瞳があった。
「ずるいよ、片桐。私がどれだけ美咲さんに嫉妬したか、どれだけ考えて苦しんだか……」
「本当に、悪かった」
「謝るだけじゃわかんないよ。ちゃんと言ってくれないとわかんないよ。どうせ私、仕事バカで鈍感だから……」
「平井」
目頭が熱くて、必死に堪えながら片桐を睨む。
そんな私を片桐は優しい顔で見つめてゆっくりと口を開いた。
「平井、好きだ。もう、ずっと前からお前のことが好きだった」
片桐のその言葉で、涙腺が崩壊した。
□TRIFLE□15□END□