□TRIFLE□編集者は恋をする□
 

そう思っていると、ぐるんと視界が反転して体にかぶせていたシーツをはぎとられた。

「きゃ……!」

小さく悲鳴を上げた私は、自分に覆いかぶさる綺麗に腹筋の割れた逞しい体に思わず見惚れ言葉を無くす。
薄暗い室内の狭いシングルのベッドで、私を見下ろし挑戦的に微笑む男はずるいくらい色っぽくて、勝手に胸がドキドキと跳ねた。

「すぐ男に口説かれるくせにいつも無自覚でふらふらしてて、嫉妬してばかりだったんだけど?」

「そ、そんな事ないよ。男の人に口説かれたことなんて……」

「ウエディング本のカメラマンは?」

「あれは、お酒が入って悪ノリしただけだし、女ならだれでもいい人だったから」

「じゃあ三浦は?」

唇が触れそうなくらい近くで、片桐が私の事を責める。
お互いが喋るたびに微かに湿った吐息が唇に触れて、キスを焦らされているようでドキドキした。

「口説かれたけど……、冗談だって言ってたよ」

「冗談?」

片桐が私を疑うように小さく首を傾げた。

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