□TRIFLE□編集者は恋をする□
「こんなの、ダメ……っ。仕返しにならないよ」
「ん?」
「だって、気持ちよすぎて……。もう、おかしくなりそう……」
息を荒げ、途切れ途切れでそう言った私に、片桐は耳元で小さく笑った。
「お前は天然でそういう事言うよな」
「あ……、んっ。なに……?」
「なんでもない」
静かにそ首を横に振った片桐は、私の手に指を絡めた。
ぎゅっと手を繋ぎながら、また激しく動き出す。
何度も打ちつけられる快楽に、私は必死で手を握り返した。
「由依……」
片桐の低い声が私の名前を呼ぶ。
それだけで全身がきゅっと反応して震えてしまう。
好きな人に名前を呼ばれるだけで、こんなに幸せになれるんだなんて。
そんなこと、28年間生きてきて今はじめて知った。
「ん、匠……っ。すき……」
上擦った私の小さな声に、片桐は優しく微笑んだ。
□TRIFLE□16□END□