□TRIFLE□編集者は恋をする□
「どうせ仕事頑張ってるフリをして、職場の男に媚び売るような嫌な女なんだろうなと思って編集部に見に行ったら、本当にただの仕事バカなんだもん。呆れちゃった」
美咲さんははぁーと息を吐きながら、顔にかかる髪を耳にかける。
「バカみたいに一人で突っ走って暴走して。危なっかしくて周りで見てる人を巻き込んで。気が付いたら隣にいる私まで前向きな気分にさせられちゃって。ほんとむかつく」
「なんですかそれ。褒められてるのか貶されてるのかかわりません」
苦笑いしながらそう言うと、美咲さんは私を振り返った。
「褒めてんのよ」
「え……?」
てっきり貶されてると思っていたのに。
驚いて目を丸くした私を、美咲さんは馬鹿にしたように鼻で笑う。
「あんた見てたら、仕事に熱中するのも悪くないなと思った。あんたと匠の関係みたいに、バカみたいに必死になって頑張ってる姿を見て誰かが好きになってくれるなんて、正直羨ましいよ」
「美咲さん……」
予想外の言葉をかけられて、鼻の奥がつんとした。