□TRIFLE□編集者は恋をする□
 

「だって、今まで平井さんの超不器用な恋愛事情を観察するのが楽しみだったのに、うまいことくっついちゃったから最近退屈なんですもん」

「ちょっと。ひとの恋愛を暇つぶしにしないでよ」

「でも、油断したらこれからまだまだ波乱が待ってるかもしれないわよ」

葉月さんは綺麗な顔でそんな恐ろしい事を言って微笑む。

「やめてくださいよ。波乱なんてもういいです」

「何言ってるんですか平井さん!あの色気の塊みたいな片桐さんと付き合うんですよ?平井さんみたいに恋愛ベタな不器用な女が上手く付き合っていけると思うんですか?」

「もう!そうやって脅さないでよ!」

そんな風に編集部のデスクで話していると、背後から声をかけられた。

「14時から編集会議はじまるって。準備しとけよー」

「あ、はーい」

慌てて振り返る。
資料室へ向かう途中の片桐と目が合った。
今日もラフな格好をして後ろで無造作に髪を束ねた片桐が、切れ長の目を緩め一瞬目元だけで微笑んだ。

その何気ないしぐさに、胸がきゅんと音をたてる。

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