□TRIFLE□編集者は恋をする□
ただ目が合って笑いかけられただけなのに、小さく飛び上がりたくなるほど幸せを感じる。
だけどここは職場だから、そんな浮ついた気持ちを悟られないように表情を引き締めて立ち上がった。
「あと10分で会議だって。準備しなきゃ」
自分のデスクの引き出しの中にウエディング本を仕舞い、かわりに準備していた企画書を取り出す。
「そういえば、前から思ってたんですけど、なんでうちの雑誌ってTRIFLEって名前なんですか?」
デガワに問いかけられ、私は思わず目を丸くした。
「え?デガワそんな事も知らなかったの?」
「だって誰も教えてくれなかったんですもん。トライフルって、カップに入ったスイーツの事ですよね?」
「そう。スポンジの切れ端を使ったイギリスのスイーツ。でもその他に、つまらない事とか些細な事って意味があるの」
「へぇ知らなかった」
もう何年もこの編集部にいるのに、本当に知らなかったんだと苦笑いしながら頷いた。