□TRIFLE□編集者は恋をする□
スマホの着信音で目を覚ました。
隣で寝ていた平井が寝ぼけたままスマホに手を伸ばし、着信を確認してため息をつく。
俺の腕の中からそろりと抜け出した平井の背中を、寝転んだまま眺めた。
「もしもし、……うん。まだ寝てた」
閉め切ったワンルームに、平井の小声がやけに響く。
休日のこんな早い時間に、誰からの電話だろう。
平井の声の調子から、仕事関係ではなさそうだ。
「だから、違うって……、気が早すぎ。まだ付き合ったばっかりなのに」
こちらに背を向け声をひそめ、困ったような声を出す。
「……うん、わかってる。ちゃんと帰るから。でも、ひとりでだからね?」
平井は通話相手にそう念を押して電話を切ると、ふーっと長い息を吐き出して天井を仰いだ。