□TRIFLE□編集者は恋をする□
 

「や、ダメ、そこ……っ!」

「電話、誰から?」

「じ、実家の、母から……っ」

「なんて?」

「たまには顔を見せろって……、んんっ」

さっき途切れ途切れに聞こえてきた電話の内容を思い出すと、どんな用件だったのかなんとなく見当がついた。

「ふーん……」

恥ずかしそうに頬を真っ赤に染め目を潤ませ、そのくせ快楽には敏感に反応する素直な身体を見下ろす。

ぺろりと自分の湿った唇を舌でゆっくりと舐める。
するとこちらを見上げていた平井が、まるでこの先を期待するようにごくりと息を飲んだ。

大きく開け放った窓から、微かに湿った風が吹きこんで、また大きくレースのカーテンを捲り上げる。



ちらりと視界に映った八月の空は、眩しいくらいに青かった。
晴れた八月の札幌は朝から暑く、どこか遠くでジリジリと蝉の鳴く声がした。


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