□TRIFLE□編集者は恋をする□
「平井。あんまり飲みすぎんなよ」
小声で俺が注意すると、「大丈夫だよ」とへにゃっと笑う。
そんな子供みたいな無防備な笑いかたしやがって。
あきらかに酔い始めてるのに、自覚がなくて困る。
「中野さん、甘エビ食べます?あとイカの串焼きとか揚げ餃子もおいしそうですよ。私買って来るんでなんでも言ってください」
「あ、編集長ビールおかわりしますか?」
「デガワ、そっち人通るから荷物こっちに置いていいよ」
椅子に座る暇もなく、せわしなく周りに気を配る平井。
飲んでいるのにそうやってちょこちょこ動き回るから、余計に酒がまわるんだぞ。
俺はあきれながら、フードを買いに走った平井の後を追う。
両手に皿を持ちさらにビールまで買おうと苦戦している平井を見つけて、ため息をついた。
助けようと近づいた時、平井の後ろから伸びてきた手がひょいと皿を持ち上げた。
「持ちますよ、平井さん」
そう言ってニッコリ笑ったのは北日本印刷の営業、大下だった。