□TRIFLE□編集者は恋をする□
「あ、大下さんありがとうございます。偶然ですね!」
「偶然じゃないんです。中野さんに、平井さん達に送別会開いてもらってるって聞いて、急いで仕事片づけて飛んできたんですよ」
「そうなんですか、お疲れ様です。あっちにみんないますよ」
そう言って視線をこちらに移し、そこにいる俺に気づいて平井が笑った。
「あ、片桐。大下さんも来てくれたよ」
「呼ばれてないのに来るなんてずうずうしいですが、中野の後任として、皆さんと早く打ち解けたくて」
中野さんから引き継いでトライフルの担当になる大下は、人のよさそうな営業スマイルで言う。
けれどその左手がまるでエスコートするように、さりげなく平井の背中に回されているのを見て、俺は黙ったまま小さくため息を吐きだした。