□TRIFLE□編集者は恋をする□
「退職して、地元のニセコでペンションを開こうと思っているんです」
ほろ酔いで顔を赤くした中野さんの言葉に、平井が「わぁ!すごい!」と目を輝かせた。
「ニセコでペンションですか。素敵ですけど、思い切りましたね」
印刷会社の営業から、ペンションのオーナーへ。
まるで違う世界に飛び込む中野さんに驚く。
「えぇ、50歳にもなってそんな冒険しなくてもと、周りに散々止められましたが」
照れくさそうに笑う中野さんに、聞いていたデガワが両手を頬にあてキャーとはしゃぐ。
「ニセコいいなぁ!イケメン外国人がいっぱいいそうー」
「またデガワは、男のことばっかり」
「ニセコはスキー場目当ての外国人観光客が増えてるから、英語表記のホームページを作ったり外国人向けのサービスを工夫すれば、需要は十分ありそうですよね」
俺の言葉に中野さんがうれしそうにうなずいた。
「そうなんです。昔からペンションやレストランを開いてみたいって夢を持っていて、嫁さんがオーストラリアに留学経験があって英語が得意なのもあって、人生の最後に一度くらい冒険してみようかなと」