□TRIFLE□編集者は恋をする□
今にも爆発寸前の怒りを無理やり押しとどめているみたいな口調。
いつもみたいにガラ悪くすぐ怒鳴らない編集長に、余計に緊張感が高まる。
「責了ですか?占いページは再校から訂正がなかったんで校了にしたはずですけど」
「本文の方じゃねぇ、ADだ。ページ下の四分の一の」
「占いページのADって、年契約のネイルサロンのでしたよね?何か問題あったんですか?」
そう言いながら編集長のデスクに片桐が駆け寄ってきた。
「先方が10月号のデータそのまま流用してくれって頼んだらしいのに、9月号のADが入ってる」
編集長の言葉に、葉月さんが9月号を持ってくる。
そしてデスクの上に開いてあった10月号と見比べて、大きくため息をついた。
「うわ。9月号思いっきり夏っぽいデザインのネイルの広告ですね」
「9月号は8月発売だからなぁ」
「でも11月号って新規でADのデータ作ってなかったっけ?再校までそれで行ってたはずですけど」
「誰が責了出したんだよ」
真剣な顔でそう言い合っていると、おそるおそる近づいてくる気配を感じて顔を上げた。
そこには真っ青な顔をしたデガワがいた。
「あ、あの……」
絞り出した声は微かに震えていて、
「あたし、やりました……」
小さな声でそう言った彼女に、皆の視線が集まった。