□TRIFLE□編集者は恋をする□
「あの、あの……」
今のデガワの気持ちが痛い程わかる。
自分のしてしまった事への後悔と懺悔と、それと同じくらいの大きさの、責任から逃れようとする自己弁護。
言い訳をして自分を守りたいのと同時に、きっと、完璧に打ちのめされたいくらい叱って怒鳴ってほしいと思ってる。
そんなデガワの気持ちを知ってか知らずか、振り返った編集長が鼻で笑った。
「あ?お前も付いてくるのか?」
「えっと……」
「お前みたいに中途半端な奴が、そんなバカみたいなヒラヒラした格好で、何をしようって言うんだ」
ぞっとするくらい、低い声が響いた。
その、軽蔑するような冷たい声に、頭から冷水を浴びせられたみたいに、デガワの顔から表情が消える。
「いつもみたくかわいく謝って涙でも流せば、許してもらえると思ってんのか」
途方に暮れたデガワをバッサリと切り捨てる編集長。
「これから合コンなんだろ?せいぜいイイ男みつけてこいよ」
手の中の社用車の鍵をカチャリと流しながら、編集長がエレベーターに乗り込む。
目の前でしまったその扉の前で一歩も動けずにいるデガワを見て、私は静かにため息をついた。