□TRIFLE□編集者は恋をする□
まったく、あの編集長は。
こんなに若くて可愛い女の子を容赦なく泣かして、フォローするのは人任せにするなんて、相変わらず性格が悪い。
なんて心の中で編集長に悪態をつきながら、大きくため息をついた。
「うちの編集長はあえて怒らず反省させるのが得意だから、あんまり気にしなくていいよ」
私がデガワに向かってそう言うと、葉月さんも給湯室に入って来て笑う。
「そうそう。放置プレイが得意なのよね」
「……どういう意味ですか?」
デガワは私と葉月さんをきょとんとした表情で見る。
「編集長は、一番怒鳴って欲しい時に無視される辛さを分かっててやってるのよ」
「そうそう。しばらく放置して一人でどん底まで落ち込ませるのよ。平井もよく泣かされてきたわよね」
「言わないでください。思い出したくもないんで」
そう言い合う私と葉月さんに、デガワの頬も微かに緩んだ。
ずっと息をつめて張り詰めていた気持ちに余裕ができたのか、デガワが大きく深呼吸をする。
その様子を見て、私は静かに口を開いた。
「もちろん、デガワのやった事は大きなミスだよ。校了時に誰にも確認せず勝手に責了出すなんて、ありえないから」
「……はい」