□TRIFLE□編集者は恋をする□
「でも、今回の事は私も悪かったから、謝る。ごめんねデガワ」
私が頭を下げると、デガワが驚いたように、何度も瞬きをした。
「え?え?なんで平井さんが謝るんですか?全部あたしが勝手に……」
「みんなが忙しそうで声かけられなかったから、ひとりで判断したんでしょ?」
「そうですけど……」
「いくら校了時だからって、後輩が声をかけるのをためらうくらい余裕がなかった私が悪かった。ごめん」
時間との勝負の校了時。
いつも自分の抱えたページに一杯一杯で、必死に仕事をこなしていたけど、ここで編集長の次に古株の私が、もっとまわりに気を配るべきだった。
そうすれば、デガワが勝手に判断したりしなかったのに。
「自分がやったって言いだすのは怖かっただろうし、編集長にあんな態度取られたのも悲しかったでしょ?私がもうちょっと余裕をもって仕事をしていれば、デガワにこんな思いさせずにすんだ」
「平井さん……」
くしゃっと、デガワの表情が崩れた。
まるで何かがはじけたように、声を出して泣きだす。