□TRIFLE□編集者は恋をする□
嫌な予感がして振り向くと、そこには片桐がいた。
「お前、仕事中とベッドの中じゃ別人だな」
そう言われ、一気に頬が熱くなる。
「なっ……!!」
「ベッドの中じゃ涙目で可愛い顔して、俺の肩にしがみ付いてたのに」
片桐は他の人には聞こえない小声で、でも平然とそんな事を言う。
耳元で響いた片桐の低い声に、ベッドの中での記憶が生々しく甦って、一気に頬が熱くなった。
こんなに動揺している私をよそに、片桐はホワイトボードの自分の欄に外出先を書き込んで、さっさとフロアを後にする。
まだ動揺が収まらず両手で顔を覆っていると、三浦くんが「どうしたんですか?」と、声をかけてきた。
「ううん。なんでもない」
気を取り直して、また険しい表情を作って仕事を再開する。
「そういえば先週の金曜日、あの後片桐さんとどうなったんですか?」
「どどど、どうなったって、何が?」
一番聞かれたくない事を聞かれ、動揺のあまり声が上擦った。