□TRIFLE□編集者は恋をする□

 

「あのまま勢いで二人が付き合い始めたりしたのかなーと思って」

「つ、付き合うって、私と片桐が!?ないないないない!」

「無いですか?片桐さんって実は前から平井さんが好きなんじゃないかと思ってたんですけど」

「あの無愛想な片桐が私を好きとか、絶対無いから!」

「ふーん」

実際セックスはしてしまったけれど、あれは情けない私に腹を立てた片桐と酔った勢いが重なっただけで、好きとかいう甘い感情は一切なかったと思う。

現に朝になったら、なんの未練もなく片桐は帰って行ったし。
それはもう、こっちが拍子抜けするくらい、何事もなかったかのような平然とした顔で服を着る片桐からは、私の事を好きだと言う感情は一切感じられなかった。
だから、あれは一夜の事故みたいなものだと割り切り忘れることに決めた。

それなのに、片桐はさっきみたいに仕事中にサラッとベッドの中でのことを思い出させるような事を言う。

片桐がなにを考えているのか、まったくわからない。

そう思いながらホワイトボードを見る。
片桐の帰社予定欄には直帰と書かれていて、とりあえず今日はこれ以上彼の顔を見ずにすむと、ほっと胸をなでおろした。

< 98 / 396 >

この作品をシェア

pagetop